特定技能と技能実習の違いとは?制度の違いや職種について
- 2021.03.03

近年では、特定技能の在留資格や外国人技能実習制度により、幅広い業界で外国人材の受け入れが進んでいます。特定技能と技能実習は、名称が似ているため混同されることも多いですが、外国人材を受け入れる上ではそれぞれの違いを正しく理解することが大切です。そこで今回は、特定技能と技能実習の違いをふまえ、それぞれの制度の詳細や取得条件についてわかりやすく解説します。
特定技能と技能実習の目的の違い
特定技能と技能実習は意味を混同されることが多いですが、それぞれの実施目的は異なります。今回は、特定技能と技能実習について、業種や職種、家族滞在の可否、転職の有無、受け入れ人数制限の有無といった4つの観点から違いを比較します。
役割
特定技能という在留資格は、人手が不足している業界で外国人材を受け入れることを目的としています。国内での人材確保に向けた取り組みをしていても、人材確保が難しい業界や企業で、専門的な技術やノウハウを持っている外国人材を即戦力として受け入れるものです。
一方で技能実習制度は、協定を結んでいる国から実習生を受け入れ、高い日本の技術を企業での実習を通じて身につけてもらい、母国に帰国し技術を広めてもらうといった、国際貢献を目的としています。
業種・職種
特定技能の在留資格で就業できるのは、14業種あります。
- 宿泊業
- 航空業
- 自動車整備業
- 外食業
- 飲食料品製造業
- 介護業
- 漁業
- 農業
- ビルクリーニング業
- 造船舶用業
- 産業機械製造業
- 建設業
- 素形材産業
- 電気電子情報関連産業
外食業はこれまで特定技能が就業可能な対象業種には含まれていませんでしたが、新たに含まれることとなり、現在は特定技能の在留資格を持つ人を正社員として雇用できるようになりました。
技能実習の場合は、主に6つの業種が対象になります。
- 農業関係
- 漁業関係
- 建設関係
- 食品製造関係
- 繊維衣服関係
- 機械金属関係
家族滞在
家族滞在は、日本で就労資格を持つ家族がいる場合、就労資格がなくても一緒に日本に滞在できる在留資格を意味します。特定技能1号と技能実習の場合は、基本的に家族滞在は認められていません。ただし特定技能2号は、配偶者と子など、要件を満たせば家族滞在が可能です。
転職
特定技能と技能実習は、転職の可否も異なります。技能実習の場合は、そもそも就労ではなく実習が目的のため、転職という概念がありません。ただし、実習先の企業が倒産する場合や技能実習2号から3号へ移行する場合は、「転籍」ができます。
特定技能は就労を目的とした在留資格のため、同じ職種に限り転職が可能です。
受け入れ人数制限の有無
特定技能と技能実習では、実施目的の違いにより受け入れ人数制限の有無にも違いがあります。
特定技能は、人手不足を補うことが目的のため、基本的には受け入れ人数の制限は設けていません。ただし、業種によって制限を設けている場合があるため、事前の確認が必要です。
技能実習は、1人ひとりの実習生に技能を身につけてもらうことが目的のため、適切な指導ができるように、受け入れ人数には制限を設けています。
特定技能
在留資格の1つである特定技能の概要と1号と2号の違い、取得条件について解説します。
概要
特定技能とは、人手不足が顕著な業界において即戦力として就労する、特定の専門性や技能を持った外国人に付与する在留資格です。2019年4月1日より、新たな在留資格として導入されています。特定技能には、1号と2号の2種類の在留資格があるのが特徴です。
特定技能1号とは
特定技能1号は、前述した14種類の業種において「相当程度の知識または経験が必要な技能」が求められる業務に従事する在留資格を指します。
- 在留期間:4か月、6か月または1年ごとに更新(上限は通算5年前)
- 技能のレベル:試験などで確認
- 日本語能力のレベル:日常生活や業務に必要なレベルかどうかを試験などで確認
特定技能2号とは
特定技能2号は、前述した14種類の業種において「熟練した技能」が求められる業務に従事する在留資格を意味します。
- 在留期間:6か月、1年または3年ごとに更新
- 技能のレベル:試験などで確認
- 日本語能力のレベル:確認なし
特定技能の取得条件
特定技能の在留資格を取得するためには、「特定技能評価試験に合格」または「技能実習2号の修了」が必要です。
特定技能評価試験では、技能レベルと日本語能力がチェックされます。本試験は原則として、日本国外で実施されるのが特徴です。
技能実習2号を修了すると、特定技能に移行することが可能です。この場合は、特定技能評価試験は免除されます。
技能実習
外国人技能実習制度の概要をふまえ、1号から3号までの違いと取得条件について解説します。
概要
外国人技能実習制度は、1960年代後半頃より行われていた、海外の現地法人などにおける社員教育としての研修制度が評価され、1993年に制度化されました。
2017年11月1日に技能実習法が施行され、外国人技能実習制度が新しくなり、受け入れ人数枠の拡大などが実施されるようになりました。協定国から実習生を受け入れ日本の技術を伝授し、帰国後は母国でその技術を広めて経済発展に活かしてもらうといった、国際貢献を主な目的としています。
そのため、技能実習の終了後は帰国しなければなりませんでしたが、特定技能の在留資格の新設により、実習終了後も特定技能に移行することが可能になりました。
技能実習1号2号3号の違い
技能実習は1号2号3号と、3つの区分に分かれています。
技能実習1号は、日本に入国して1年目の技能を習得する活動を指し、実習期間は原則1年間です。技能実習2号は2〜3年目にあたり、さらに2年間の実習を通して技能の習熟を図るための活動を行います。技能実習3号は4〜5年目にあたり、技能の熟達を目指した活動に従事します。
取得条件
技能実習1号を取得するためには、以下の7件を全て満たすことが必要です。
- 年齢が18歳以上である
- 技能実習制度の目的を理解した上で、技術の習得を希望する
- 帰国後に、修得した技術を活かせる業務への従事を予定している
- 企業単独型技能実習の場合は、海外の子会社や取引先企業の従業員である
- 団体管理技能実習の場合は、実習を受けたいと考えている業務に本国で従事していた経験がある、または団体管理技能実習を利用しなければならない特別な事情がある
- 団体管理技能実習の場合は、本国または住所がある地域の公的機関より推薦されている
- 今回が初めての技能実習1号の取得になる
技能実習1号の修了前に技能評価試験を受け合格すると、技能実習2号に移行できます。技能実習3号に移行したい場合は、修了前に学科と実技試験を受験し合格することが必要です。このように、毎回試験に合格することで、技能実習生として最大で5年間滞在することが可能です。
まとめ
外国人の在留資格である特定技能と技能実習の違いについて、制度の目的や職種などの観点から解説しました。特定技能は、人手が不足している業界で、即戦力として働ける専門性を兼ね備えた外国人材を受け入れることが目的である一方で、技能実習制度は日本企業での実習を通して技術を修得し、母国の経済発展に活かしてもらうといった、国際貢献を目的としています。このような違いを正しく理解した上で、外国人の受け入れを進めていくことが求められます。